歴史の真実


 貧民に対する牧場主たちの横暴を描いた『天国の門』(米国、マイケル・チミノ)。
 爽快感やロマンティシズムを裏切り、次々と救いを排除していく展開は、1981年公開当時の興行的な失敗と制作会社の倒産を納得させるものである。
 主人公以外、だれもかれもが、実にあっさりと殺される。人も町も、破滅を望んでいるかのように、追い込まれていくし、映像の美しさと、音楽の優雅さは、悲壮な流れと逆行している。
 だが、逆説的な演出こそが、本作を傑作にしたのだ。
 作中で浮かび上がる見せかけの豊かさ、残酷な平和こそ、歴史そのものだからである。

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