人間賛歌の言い訳


 ずるくて、めめしい。『永い言い訳』(日本、西川美和)で本木雅弘が演じる作家は、浮気中に妻を失い、彼女の親友の遺族の前でも暴言をはいたりする卑小な人物。ところが、醜態を見せれば見せるほど、奥底の弱さ、不器用さが見えてくる。横暴にふるまいながら、横暴ではない。人を突き放すようでいて、突き放してはいない。屈折感、二面性は、まさに人間そのものである。
 卑俗な人間こそ、愛しい。そんな気持ちにさせる逆説的なヒューマンドラマだ。 

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