帰る場所


 何度も生命の危機に陥り、断酒を誓いながらも、浴びるように酒を飲み続ける男。周囲が冷たいわけではない。母も元妻や娘たちも、彼を慕い、優しい。それでも、飲んでしまう。
『酔いが覚めたら、うちに帰ろう』(日本、東陽一)の主人公は、初めから死ぬことに急いでいるようにさえ見える。この世ではない場所へ行くことを肉体も心も要求しているかのようである。
 帰るべき場所は、現世の「うち」ではないのだろう。

 

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