休暇の時間

 男二人組が、相乗りアプリで知り合った青年と共に、南フランスの田舎町へ。『みんなのヴァカンス』(フランス、ギョーム・ブラック)は、恋人のけんかや恋敵との衝突、人妻との交流がゆるやかなタッチで綴られる。笑いがあり、哀しみがある。彼らの世界に、なじむにつれて、休暇の終わりを惜しむことになろう。

        

 

量産型の楽しみ

 汎用キャラクターのプラモデルを組み立てることで生き方のヒントを得る女たち。『量産型リコ』(テレビ東京)のヒロインは、イベント会社の所属部門存続も、自身の恋愛成就もままならないが、量産型の視聴者にとっては、そのほうがいい。派手な成功もない分、リコたちの一喜一憂が、楽しめるに違いない。    

               

 

抑圧の記録

 2019年、中国支配が進み、自由を奪われた香港で、若者を中心にした大規模なデモが起きた。非暴力の参加者に対し、警察は暴行を加え、参加者は監視対象になり、自由を奪われた。『時代革命』(香港、キウィ=チョウ)は、縦横無尽のカメラワークと、参加者への密着によって、間近で見る人々の動きを丹念に撮影している。今日では、台湾の自治も、同様に危ぶまれる。

      

 

絵と科学

 絵を描く科学者。『かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと』(ザ・ミュージアム)には、科学者としての厳密な姿勢を貫きつつ、ユーモラスで親しみやすい本を作り続けた作家の絵が並んでいる。

                   

 

教育のしっぺ返し

 効果がすぐには見えないため、為政者に利用されやすく、もし実害があれば、将来、確実に国の基盤を脆弱にしかねないのが、教育である。『教育と愛国』(日本、斉加尚代)では、ある種の勢力が教育の現場に介入したり、教育関係者を翻弄する現象が、証言されている。この手の勢力が、歴史の実状や教育の意義を本質から理解しているのかどうか。教育を不当に操作した人は、教育を操作された人に、路上で、しっぺ返しを食らうこともあろう。

                   

 

カメラと感情

 廃トンネルで暮らす母が、幼い娘と地上に出た。娘に生きていくことを望むならば、彼女を手放すしかなかった。『きっと地上には満天の星』(米国、セリーヌ・ヘルド&ローガン・ジョージ)は、地上に出るまでの娘と、地上に出てからの母との視点が、カメラの位置によって、区分されている。視界をしぼることによって、両者のおびえや悲しみが、間近に感じられる。

      

 

埋もれた開拓者

 ただ映すだけではない、演出や編集の加えられた映画。劇映画の始祖、アリス・ギイの功績が再評価されたのは、後年の丹念な研究によるものだ。『映画はアリスから始める』(米国、パメラ・B・グリーン)では、彼女の公私にまたがる軌跡を証言や映像によって浮き彫りにする。歴史が実権者、多数派の側のみで作られ、普及するのならば、埋もれた開拓者は、他の分野にもいるのだろう。

       

 

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