不在を通じて

 ドキュメンタリーのようでもあり、寓話のようでもある。『ある女優の不在』(イラン、ジャファル・パナヒ)は、少女の自殺動画の真相を調べるために女優と監督が村を訪ねるという設定から、抑圧される者の訴えや因習への抵抗が語られていく。

 虚構と現実のバランスが絶妙で、展開には意外性、映像には計算と選択がある。題材やテーマに気を取られるあまり、映画としての魅力を愚かにするような散漫さは、みじんもない。抑圧への抗議とは、優れた表現に徹することなのである。

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