報道のバランス


 世界を揺り動かす強大な軍事力を持つ米国。もう一つの武器は、マスメディアだ。メディアは、戦争を推進できるが、歯止めをかけることもできる。
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』 (米国、スティーブン=スピルバーグ)のワシントン・ポストは、ベトナム戦争のさなか、政府の機密文書の欺瞞をあばき、無益な戦争を抑制させた記者と新聞社主の活躍を、再現したものである。
 社主に焦点を置いたのが、すぐれた着眼だ。企業上場を前に、親しい政府の要人と一線を引いてまで、報道を決断したキャサリン=グラハム。彼女の苦闘ぶりが、ストーリーに奥行きを与えている。
 誤った政策の推進文書まで、機密扱いすべきなのか。メディア公開が、国民の生命という真の公益に反することなのか。米国では、まだバランス感覚が、ぎりぎりのところで、維持されているのである。

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