死にゆく人間のために


 死にゆく人間こそ、だれよりも芸術に飢えているものだろう。自分が死んだ後にいくらお経を唱えられても、葬送の曲を流されても、そんなことは知ったことではない。人生の終りに読み聞かしてもらいたい作品、それを聴きながら死にたい楽曲、人間が生きているあいだ芸術に救いを見出すのは、ひとつには、そういったもろもろを、時間をかけて精選するためなのだ。(西成彦『ターミナルライフ 終末期の風景』作品社)

 生きている間に出会いたい芸術。
 それだけを目指して、芸術は創られる。

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