坂道


 1960年代を舞台にした父の脚本を息子が演出したアニメ『コクリコ坂から』(日本、宮崎吾朗)。
 建物の取り壊しや父親の正体をめぐって、高校生の男女が葛藤するものの、すべてが、あっさり片付いてしまう。
「古くなったから壊すというなら君たちの頭こそ打ち砕け! ……新しいものばかりに飛びついて歴史を顧みない君たちに未来などあるか!!」
 建物存続をめぐる討論会で少年が主張するが、その場面でさえ、距離を置いて、とらえられている。
 旧世代の熱い思いを知ろうとしつつも、現代の監督は、すべてを理解しているわけではない。盲目的な感情移入を避けているのも、そのためだ。
 過去を冷めた目で見つめたとしても、その先に何があるのか。
 坂道をやみくもに上ればいいという時代は過ぎた。坂を下り、過去を振り返る。それだけでは先がない。どこかで上を向き、歩かなければならない。
 本作は、プロセスの作品なのだろう。
 

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