芸術の価値

mukuku2008-03-26

「社会性の強い作品」「メッセージが生硬な表現」も「きちんとエンターテインメントとして成立している」なら許される。「娯楽」の領域に踏み込むことで初めて「一人前の大人」としての扱いを受け、ショービジネスの世界に身を置く「権利」を勝ち取ることができるという構図。それは正しいのだろうか。(坂手洋二『私たちはこうして二十世紀を越えた』新宿書房

 なにも、芸術至上主義を主張する必要はない。かといって、あらゆる表現が娯楽優先で済まされてしまえば、重要なものがこぼれ落ちるのは間違いない。

「テロ事件」は、アメリカが牽引してきた、成長を前提とする大量生産・大量消費者型社会の価値観に向けての批判である。一部の人間に富が集中する社会、人間を含んだ「自然」に対する近代以降の「経済中心」の価値観による「搾取」に対して、このような形でしかできない「批評」が存在すると考えた人たちがいたのだ。(同書)

 このような時代にあって、本当に待ち望まれるのは、現社会で消化しやすいやすいものに、たやすくは安住しない表現である。そこにこそ、芸術の先鋭的価値があるように思える。

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