酔っ払い作家の夜

mukuku2008-01-30

 無頼派作家のブコウスキーは、酒と女にだけ明け暮れていたわけではない。
 彼の分身たるチナスキーは、毎晩、ウイスキーとビールをあおりながらも、猛烈に小説を書いている。

 一晩に十ページが目標だったが、次の日にならないと自分がどれくらい書いたのかまるで見当もつかなかった。朝目を覚ますと、まず吐いてから居間によろよろと歩いていき、カウチの上を見て昨日はどれくらい進んだのか、いつもその時に初めて確かめるのだった。たいていは十ページの目標を超えていた。 十七、十八、二十三、二十五ページになることもあった。夜ごと書いた原稿は不要な部分を削ったりして推敲しなければならない。最初の小説を仕上げるまで二十一夜かかった。(チャールズ・ブコウスキー中川五郎・訳『詩人と女たち』河出文庫

 いいかげんなようでいて、勤勉なのだ。


 

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