カラオケで演歌しか歌わないような人を、表現者として、信用していいものなのかどうか。
小室哲哉と近田春夫の対談が興味深い。
小室 演歌というものは様式美の究極みたいなものだと思っています。……こぶしにせよ楽器のソロにせよ、様式が非常にきっちりと決められている。すべての演歌は、一冊のマニュアルに則ったものなんだと思いますね。
近田 だから少なくともアートではないんだよね。演歌は、職人技というか、もうアルチザン的なものがプライオリティの上位にくる仕事なんだよね。小室 自分が考えるようなクリエイティブな音楽の範疇には入らないと思います。劇場も服装もそうだし、システム自体もそうですけど、演歌にまつわるもの全部一切、僕が考えてる音楽とは別の世界ですね。
(近田春夫『考えるヒット2』文春文庫)
演歌のメロディーや世界観を違和感なく受け入れるとき、もはや創造力は、定年退職をしているのである。