観客ばんざい!

mukuku2007-06-10

 映画を撮りたくても資金がなく、失意の晩年を送った監督は少なくない。思うがままに映画を撮れる北野武は、幸せである。反面、彼を抑える者が周囲にいないから、見るに堪えない作品も生む。つまらない、くだらないと怒る観客がいたところで、北野は無視するだろう。
 新旧の名作映画をおちょくり、ナンセンスギャグをてんこ盛りにした『監督・ばんざい!』(日本)は、確信犯的な失敗作だ。北野が力を入れたのは、ラーメン屋の店員に絡んだヤクザをプロレスラーの店長が叩きのめす場面。新鮮味がないし、まともに笑えるものでもない。途中からは、こうしたべたなコントまがいのシーンを片っ端からつないでいく。こうなるともう劇場映画というよりも、コント集である。
 おそらく北野は、映画にさほど愛着を持っていないのではないか。だからこそ、一流のキャストに無意味な演技をさせようが、しまりのない画面を垂れ流しにしようが、なんの痛みも覚えないのだ。
 こうした映画を撮っても、持ち上げる批評家もいるだろうし、楽しむ観客もいる。彼らはいい映画を発見できないし、ずさんな映画も見抜けない。テレビのお笑い番組で鍛えられた北野は、彼らのレベルも十分承知しているのだ。

 

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