ノベライズ

mukuku2007-05-03

 ノベライズ向きの映画とそうでない映画とがある。
『ゆれる』(日本、西川美和)は、つり橋での落下事故にかかわる兄弟の言動が明示され、なおかつ、多様な解釈ができる。人物の心理や事件の真相は、観客が素直にとらえてもいいし、意外な想像も可能である。
 ノベライズなど、しないほうがよかったろう。映画で明かされていない心理を細かく説明されると、かえって興ざめする。
『フランドル』(フランス、ブリュノ=デュモン)は、戦争に行く男にしろ、郷里で奇行を重ねる女にしろ、最低限のセリフや描写が不足している。手がかりが乏しいから、心理を想像しようがない。
 寓話的なこの作品には、興味深い材料がたくさん入っている。小説にすると、おもしろくなるだろう。
 もっとも、ノベライズの余地があるのは、映画として未完成品だからでもある。
 

 

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