待つことのレクイエム

mukuku2007-05-01

 別役実の不条理喜劇『やってきたゴドー』では、永遠に会えないはずのゴドーがあっさりやってくる。だが、彼を待っていたはずの男たちの反応は冷たい。
 もはや、ゴドーに存在感はない。それだけでなく、この反応は、待つ楽しみを失った男たちの虚無感も表現しているのかもしれない。
 現代の我々は、待たされることを嫌がる。待ち合わせの際は、ちょっとの遅れでさえ、携帯電話で連絡を入れる。そうしないと、相手を不機嫌にさせてしまうからだ。ある電車の事故は、時刻表どおりの運行をするためにスピードを出しすぎた結果だった。
 ひたすら急ぐのは、待つ楽しみをこの世から葬るためだろうか。

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