散った愛

 不慮の事故で夫を失った未亡人と、彼女を愛し続ける男。互いに意識しながらも一線を越えなかった二人が、被害者の妹の法廷での証言によって救われ、晴れて結ばれる。『風と共に散る』(米国、ダグラス・サーク)は、ハリウッド映画の枠組みを踏襲するが、愛し合う者同士が結ばれることで、置きざりにされた兄妹が悲運に見舞われるという皮肉も、同等のウェイトで描いている。散った愛にも、美しさがある。

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ゲテモノの本質

  東京では3月まで開催された『楳図かずお大美術展』(東京シティビュー)。子ども目線での恐怖や世界観は、今日でも、みずみずしさを失ってはいない。ゲテモノ的な線画や派手な色彩から、事物の本質が見える。

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少年の体験

 北アイルランドの小さな町。町中の人々が顔見知りで、教会通いはもちろん、映画や音楽にも親しむ。貧しくても、異なる宗教の人々が、助け合って生きている。

ベルファスト』(英国)の9歳の少年には、ケネス・ブラナー監督の体験が投影されている。仲の良かった住民が、異国の暴力に感化され、相互にいがみあう。身の安全と夫の稼ぎを考え、少年の一家は町を去り、ただ一人残された祖母が見送る。

 モノクロで再現された町は、今日にもつながっている。

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演出の情熱

 倦怠気味のカップルが間近の結婚を伝えた途端、知人たちとの愛憎が勃発。破断寸前の関係に。

『PASSION』(日本、濱口竜介)の対話は、ほとんどの場面が一対一か、せいぜい一対二だ。お互いが濃縮された本音をぶつけあい、話をそらすことも、ごまかすことも許さない。映像の効果はともかく、演出が印象的だ。

 

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焼け跡から

 家が焼けた。フィルムも失った。監督の原將人が大やけどを負い、妻のまおりがスマホで日々を写す。

 優しい息子と、無邪気な娘たち。撮ることと、撮られることで、現実の悲惨さが遠のき、希望の記録に変わる。

 何があっても、どうにか生きている。『焼け跡クロニカル』(日本)は、一家族の事態を超える物語だ。

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ゲリラ的アート

      匿名でありながら、世界中で金銭的にも評価されている。計算された風刺とも言えるし、高度なアートとも言えるが、単なる落書きであり、無意味なお遊びと言えなくもない。『バンクシー展 天才か反逆者か』(WITH HARAJUKUほか)は、世界各国で展示される作品の停留にすぎないが、遊戯を隠れ蓑にしたバンクシー的な試みが、危機的な場所でどこまで実践されるか。商業性や芸術性といった枠組みから離れたゲリラ的なアートが、アーティストの名前以上に普及しているかにこそ、注目しなければならない。

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ロシア側の論理

  単に平和や制裁を唱えるだけでは、真の行動原理は見えず、現実的な解決からも遠ざかるだけだ。西側の報道・論調から漏れているロシア側の論理とは何か。2015年から2017年にかけて、オリバー・ストーンが行なったインタビュー集(土方奈美:訳『オリバー・ストーン オン プーチン文藝春秋)で明かされた大統領の証言は、今日の出来事を検証するうえできわめて貴重である。

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