埋もれた言葉

 古典というほど古くはない。斎藤美奈子『中古典のすすめ』(紀伊国屋書店)は、1960年~90年代までのベストセラーを現代の目で判定する。結果はさておき、紹介本から引用された警句は、今日にも通じるだろう。

 丸山真男『日本の思想』は、「保守勢力も進歩主義者も、自由主義者も民主社会主義者も、コンミュニストもそれぞれ精神の奥底に少数者意識あるいは被害者意識をもっている」と明かし、司馬遼太郎『この国のかたち』は、「ナショナリズムは、本来、しずかに眠らせておくべきものなのである。わざわざこれに火をつけてまわるというのは、よほど高度の〈あるいは高度に悪質な〉政治意図から出る操作というべき」だと主張している。

 日々、メディアやSNSで大量に飛び交う言葉の群れによって、これらの言葉は埋もれてしまった。

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