記憶の記録

 イスラエルに暮らす兄弟の家族。仲睦まじい一家だが、ポーランド出身の兄弟には、ユダヤ人収容所時代のいまわしい記憶があった。教師が聞き出そうとするが、兄弟の態度は対照的だ。兄は、どこまでも口をつぐみ、弟は、やむなく重い口を開く。いつかは、伝えなければいけないことだった。
 劇団チョコレートケーキ『あの記憶の記録』は、笑いに逃げることなく、シリアスな演出に徹する。人間がいかに残酷で、欺瞞に満ちているか。
 若い教師は、悲壮な体験がないゆえに、戦争の不滅を主張する。収容所生存者の弟は、非情な体験をしたからこそ、戦争の消滅を信じたいと、告げる。緊張感あふれるやり取りは、国を超え、時代を超える。

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