晩年の幸福


 周りから敬遠されている頑固者に対しても、要因を知れば、見方が変わるだろう。
『幸せなひとりぼっち』(スウェーデン、ハンネス・ホルム)のオーベも、そんな男だ。町内会長とは仲たがいし、規則違反の住民には小言を言い、町を行き来するホワイトカラーを毛嫌いする。
 なぜ彼がそんな人物になったのか。回想される若き時代の喪失体験によって、明らかになる。
 住民たちは彼を理解し、彼のために骨を折る。
 もはや男は、先立った妻のために死を急ぐ必要はない。晩年が、不幸ではなくなったのである。 
 
 

 

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