貪欲な凡人


 多数の人間を斬り殺した男ならば、もはや平常心ではいられない。自分の身を守るためには、姑息な手段さえ、厭わなくなる。
 五反田団の『宮本武蔵』(三鷹市芸術文化センター)は、武蔵を超越した人間として描くのではない。軟弱で卑怯。生きることには貪欲。どこにでもいる凡人として、造形している。
 人前では強さを証明できず、自身が本物かどうかも疑われる男の滑稽なふるまい。戯画的でありながら、リアルでもある。

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