見えた風景


 エッシャーの石版画『カストロバルバ』について、生物学者福岡伸一が指摘している。

 もしこの風景を写真に収めたとしたら、決してこのように見えることはない。見上げる視点と見下ろす視点、そして遠望と今歩いている道。これら多視点がひとつの画面の中に複合されているのだ。
 人間もまた生物として独自の知覚と行動によって自らの「環世界」を作り出している。(「動的な美 十選」『日本経済新聞』8月25日朝刊)

 見えた世界がどんなものだったのか。
 同じ風景でも、別の画家ならば、まったく違うのである。

アクセスカウンター