やわらかい手

mukuku2008-01-14

 年を取っている。ろくに外で働いたこともない。技能もない。普通なら職探しをあきらめてしまうところだが、『やわらかい手』(英国・ベルギー・ドイツ、サム・ガルバルスキ)の老婦人は、めげない。孫の手術費用がかかっているからだ。歓楽街で高級取りのチラシを見て、地下室の扉を開ける。どんな仕事かは、タイトルが手がかりだ。女が「やわらかい手」を使う仕事である。
 彼女は、とりたてて行動的なわけでも、たくましいわけでもない。仕事を引き受けるまでに迷いもある。にもかかわらず、決断するところがいい。
 体裁さえ気にしなければ、なんでもやっていけるものだ。その手で、思いがけぬチャンスをつかむこともある。    

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