文字の可能性

mukuku2007-12-29

 松浦寿輝の小説に出てくる「魚」や「猫」といった生物の影が、白い床に映し出されて消える。『文学の触覚』(東京都写真美術館)では、作家の書いた文字の世界が、視覚化され、変形される。
 文字が頭の中に創り出す世界は、文字を文字として刻印させるのではない。映像化とも違う。視覚化したところで、そこにとどまらせるのでなく、別のイメージを連想させ、脳髄を触発するのである。
 触れようとしても、すり抜けていく。触覚でも視覚でも体感できないところに、文字の可能性があるのだろう。

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