善き人のために

mukuku2007-02-18

 完全な善人は存在しないし、完全な悪人も存在しない。壁崩壊前の東ドイツで、芸術家の行動を監視する保安省局員を描いた『善き人のためのソナタ』(ドイツ、フロリアン=ヘンケル=フォン=ドナースマルク)では、音楽に感動した局員が人間的な感情を取り戻していく。
 この人間的な感情というものが曲者である。優しくなるのも人間であり、冷酷になれるのも人間だからだ。環境に影響されつつ、どちらの側に寄るのか。それは、自身がどうありたいかの心がけに左右される。
 壁というつっかえ棒がなくなったときこそ、個人のあり方が試される。もっとも、そのとき、善人になりきれないのが、人間でもある。
 

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