オリジナリティー

mukuku2007-02-04

 ルネ=クレールの映画『幽霊西へ行く』(イギリス)が手塚治虫の漫画『ふしぎ旅行記』のヒントになったというのは、手塚自身が語っていることだ。幽霊が海を越えて旅をするという設定は同じだが、エピソードの豊かさからして、漫画のほうがはるかに面白い。
 手塚が枯渇しないのは、様々なジャンルのものを着想に使いつつ、アレンジに卓越しているからだ。二流の表現者は、どこかで見たり、きいたようなものを、料理することなく、そのまま客に提供してしまう。そんな料理は、素材があっても、味がない。オリジナリティーとは、雑多な栄養を吸収するだけでなく、血肉にしてこそ育まれるものだ。
 筋立ての間延びした『幽霊西へ行く』は、クレール作品としては失敗作だろう。だが、淀川長治が講談調にあらすじを語ると、いかにもおもしろそうな印象を与える。解説としては危険だが、よき語り口もまた、オリジナリティーの発揮される分野である。

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