悲愴な腐臭

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』(ドイツ・フランス、ファティ・アキン)が焦点に据えるのは、実在の殺人犯の生い立ちではない。中年になった彼の日常と、かかわった女たちの人生を通じて、敗戦後のドイツの哀切をえぐりとっている。

 時代がどう移ろうとも、何ら望みがかなうこともなく、安息を得られなかった女たち。殺されて解体され、すきま間部屋に隠された肉片の腐臭は、彼女たちの悲愴な叫びである。

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