芸術の根底


 もはやパワハラとしか言いようがない音楽教師の狂人めいた指導である。『セッション』(米国、デイミアン・チャゼル)の青年は、音楽学校でジャズの名物教師からドラムの特訓を受けるが、指導は機械のように正確な演奏と、人間性を無視したいやがらせに耐えうることを要求。退校で一度は音楽を捨てた青年も、教師と再会。演奏の場で互いに攻撃しあい、鬼気迫る演奏によって、もはや果たし合いの念から、崇高な演奏の境地に到達する。
 常軌を逸した音楽映画だが、狂気が芸術の深遠へと迫り、誇張だの虚構だのといった段階を突き抜け、芸術の根底をリアルに伝えている。

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