無数の殺意

 村紗耶香『平凡な殺意』(『新潮』2月号)は、小説でなく、エッセイだ。旧タイプのしごき型編集者に暴言を浴び、無理に理解しようとして、自殺衝動にかられ、ついには他殺の妄想をする。編集者との再会時に本意を伝えた筆者は、殺人を決行してはいないが、殺意の感触は記憶している。

 実現化されていない殺人は、人の数だけ存在する。大半が実現されていないのが幸いだが、無数の存在を忘れてはならない。

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