騎士の物語

『最後の決闘裁判』(米国、リドリー・スコット)が騎士同士の確執を描くだけなら、中世の標準的な物語に終わったろう。後半、騎士の妻が夫の友人に強姦されたと告白することで、たちまち現代性を帯びた展開となる。

  裁判を占うのは、証拠調べではなく、原告と被告の決闘だ。夫と友人が一騎打ちをし、夫が負ければ、妻も火あぶりとなる。恥を忍んで証言したところで、被告が偽証と主張すれば、何の効果もない。妻は、自分を信じぬ夫のメンツ争いに利用されたばかりか、胎内の子どもさえ、失いそうになる。

   真実を明かせず、男社会の支配に服した女。彼女の視点があれば、騎士の英雄譚は、別の物語になる。

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