任務の幻

      兵士ではなく、スパイ。任務のために農民でさえ、殺し、食料を奪い、戦後になっても、潜伏し、生き残った上官の指示なくしては、帰還しなかった男。『ONODA 一万夜を越えて』(フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本、アルチュール・アラリ)は、功罪を抜きにして、小野田寛郎・旧陸軍少尉の離島生活を訓練兵時代から追う。兵士や市民と違い、時代を経ても変わることが許されなかった男の孤独感。彼が従った指令の正当性も、米軍抗戦の実現性も、幻にすぎなかったが、信じたという姿は、この映画によって、永久に刻印されたのである。

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