腐敗の対抗馬

 ライブハウスの火災事故で病院に担ぎ込まれた若者たちが次々に亡くなったのは、火傷によるものではなく、病院の設備や消毒薬の不備が原因だった。『コレクティブ 国家の嘘』(ルーマニアルクセンブルク・ドイツ、アレクサンダー・ナナウ)は、ルーマニアの製薬会社や政府も絡む汚職に、スポーツ紙の記者や、新任の厚生大臣が挑むドキュメントだ。

 どれだけ事実を明るみにしようと、利権者に食い込んだ体制は揺るぐどころか、ますます強化されるが、報道後の選挙の思わぬ結果は、無力感を与えるものではない。根の深い腐敗があるほど、志のあるジャーナリストや政治家が対抗馬として現れ、歯止めをかけようとするという逆説は、他国民も元気づけるだろう。

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