無理解への抵抗

 カミュの『異邦人』でアラブ人に発砲せざるを得なかったムルソーの言動は、当事者であれば、決して不自然ではないが、裁判官や検察官は何ら理解しない。この種の無理解は、現代のメディアや消費者にも見受けられる。

 完全版として久しぶりに上映された映画版(イタリア、ルキノ・ビスコンティ)では、主演マルチェロ・マストロヤンニが揺れ動く心理を顔で表現している。仲間をかばい、常識人への迎合を拒否し、死刑に臨むムルソー。牢獄の暗闇は、海に太陽が照り付ける前半とは対照的だが、彼の態度には、すがすがしさがある。

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