戦死の意味

 戦後の八月についてのインタビューで、加藤典洋は、吉田満戦艦大和ノ最期』に書かれた大尉の言葉を取り上げる。

  意味のない作戦で死ぬことにどんな意味があるのか、話し合う若い士官たちに向けて、大尉は告げた。進歩のない者がどうなるか。身をもって無意味に死ぬことで、自分たちのようにはなってほしくないというメッセージを、後の人間に残すのだ。自分たちは無意味に死ぬけれども、そのことには意味があるんだと。

  加藤は言う。

「自国の死者を無意味なままに深く弔う。無意味さにこそメッセージがあるんだと受け取って、自国の死者をちゃんと弔う。それができたなら、その弔いが、そのまま我々を二千万の他国の死者に対する謝罪の場面に連れていくはずだ」(佐田智子『季節の思想人』平凡社

 死者への意味付けができていない人たちは、他国に向けて、歪んだ態度をとったり、暴言を吐いたりする。死者は、持ち上げられるべきでもなければ、辱められるべきでもない。生き残った者の義務は、戦死の正確な意味を知ることだろう。

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